結論から言うと『色々やってみて絵を描く事が一番うまくいったから』です。

好きだからとか、子供の頃の夢だったからというわけではなく、総合的にみて自分は一番コレが向いていると判断したわけです。

しかし、そこに至るまでは案外長い時間がかかりました。

「何かを作る仕事をしたい」という意識は最初からあった

物を作る仕事をしたいと考えていたのは、子供の頃から工作が好きだったからです。

例えば、中学の時は電子工作クラブに入っていたり、ジオラマクラブに入っていたりしました。

絵を描くという事は「何かを作るうちの1つ」という位置づけの物で、学生の頃はまさか自分が絵で飯を食う事になるなんて夢にも考えていなかったわけです。

漫画家に憧れていた時期はありましたが、一過性の物でした。

絵を描く切っ掛けはゲームの仕事に役立ちそうだったから

高校卒業時にゲーム業界を目指す事を決め、プログラムやCGの勉強をしました。しかし、色々やっているうちに「CGも結局は絵だから絵の勉強を少しやってみるか」と感じるようになり描き始めたわけです。

しかし、絵に関してはそこまで真剣に考えていたわけではなく「目指している物で役立たせる事が出来れば良いな」程度のものでした。

運良くアニメの背景会社に縁があり仕事をする事になりました。それを足がかりにしてゲーム会社に転職し活躍している人を見てきた私は、自分もその経路でゲーム業界に入る事を目指したわけです。

必要だと思った事にはなるべく時間をかけた

プログラミング、CG に関する基礎知識、デッサンなどゲーム業界に入るために必要だと思える事には一通り時間をかけました。

プログラミングは普通に面白かったし、デッサンについては CG を制作する上で必要だと実感したので学びました。

しかし、背景画を描いてみると以外と描ける事が分かり、ゲームグラフィックで背景の仕事をやってみたいと目標を定めたのはこの頃です。

絵を描くという事は本当にシンドイ事

絵を描くという事は自分にとって難しい事でした。周りの人は描けているのに自分は描けない。3年ほど仕事としてアニメの背景やレイアウト、設定などの経験を積んだ後、業界から離れる事にしました。

新人アニメーターが精神を壊して絵を描くのを辞めてしまう、なんて話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それに近い状態だったと思います。

絵という物はとても魅力的なもので、眺めている分にはとても心豊かになれます。しかし、実際に生み出すには生半可な力では無理という事も理解出来ました。

転職は失敗

その後ゲーム会社への転職活動にシフトしたわけですが成功はしませんでした。

当時 web 上にあった求人情報に片っ端から応募しまくりましたが、履歴書がそのまま送り返された事は多かったですし、最終面接が通った後、もう一度話しがしたいからと呼び出され話をしたところ落とされたという事もありました。

印象に残っているゲーム会社側の言葉としては、当時私は20代後半でしたからゲーム会社からすると即戦力が欲しいという事。また、絵に関しては外注で済むという事。興味を示してくれた会社はいくつかありましたが、結局のところ自分の叶う形にはならなかったというのは、ひとえに私の実力不足から来たものでしょう。

今思い起こせばもっと手段はあったように思いますし、無駄な事に時間を費やしすぎた面もあったと思います。

やりたい事と出来る事は違う

自分の場合、消去法で最終的に残ったのが絵でした。

他の様々な事を諦め、結局本命ではなかった絵が最終的に残ったわけです。

自分に何が出来るのか? 何をやるのが向いているのか? という件については、とにかく興味を持った事に対してリアクションを起こしていくしかありません。振り返ってみると自分はその点は実行出来ていたように想います。だからこそ、最終的に絵を選ぶ事が出来たのだと想います。

正直に言うと、それでもしばらくの間は思い通りにならない人生に苛立ち、その感情を抑えるのに必死でした。

好きな事を仕事に出来る人は少数派

これが現実だと思います。

いくら絵を描くのが好きでも、いくらアニメが好きでも適正が無ければ生涯続ける事は出来ないでしょう。結局のところ人それぞれ適正があり、その適正にあった仕事に就く事が一番の幸せに繋がると想います。

絵描きの中には好きだから絵を描き始めてそれを仕事に出来た幸運の人も多く居ます。しかし、そういう人の「好きな事を仕事にするべき」という意見は非常に危険をはらんでいます。

絵の仕事は本人の特性を生かす仕事です。野球が好きだからといってプロ野球選手になれる人はごく一握りなのと同じように、絵でも適正が無ければ仕事にする事は出来ません。

自分にとっての救いは「物を作る仕事がしたい」という大枠での願いは叶った事です。この点だけでかなり恵まれている方だと想います。

ステップアップのためと考えていた仕事が本業に

結局、アニメの仕事に戻る事になるわけですが、一番の難関は「絵を描きたくない」状態になっていた事でした。それは自分の絵の下手さを実感していましたし、何より絵を描くという作業はとてもキツい事だったからです。

しかし、生きていくためには描かなければいけません。

結局それを乗り越える事が出来たのはさらに数年後の事で、1つのタイトルを全て任されて、それを全てやりきった達成感を得た時でした。仕事に対する幸福感を感じたのはこの時が初めてでした。

それまでは生きるための手段として絵を描いていましたが、そこから少しずつやり甲斐を見いだす事が出来るようになったわけです。

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